サンフランシスコ紀行

サンフランシスコ湾
photographs courtesy Ross Taylor



No.18 アメリカ恐るるに足りず!

☆アメリカと日本では、親の子供に対する接し方が違うようである。

結論から先に言うと、日本の親たちは子供に対して勉強についてはうるさく言うが、躾(しつけ)については勉強ほどではないようだ。

そして子供が非行に走ったりすると、学校の教育がなっていない、教師の指導が悪いなどと責任を転嫁するすることが少なくない。

アメリカの家庭では一般に、勉強については日本ほど子供に対して干渉したりはしない。

しかしながら、躾に関しては厳しすぎるくらい子供を指導する。

エチケットとマナー、就中(なかんずく)、「Please!」と「Thank you!」を徹底して教え込むのである。

これがアメリカと日本の大きな違いである。

ある日、学校から帰宅すると、私のお気に入りの陽気なシェリーがいつもとは打って代わって、神妙な顔つきで本とノートを開いており、時々奇声を発しては頭を抱えて床を転げ回っていた。

実は彼女は、アメリカの学校では珍しく、宿題を解いていたのだ、それも数学の。

数学と聞いて、私はハクション大魔王の如くに蕁麻疹が出そうになったが、中二の数学ならばと恐る恐るその宿題とやらを彼女に見せてもらった。

何とそれは簡単な分数の足し算と引き算、それに小数点のついた数字の計算問題であった。

私は思わず吹き出し、彼女が日本語を分からないことをいいことに、

「お前は中二にもなって、こんな問題も分からへんのか!? 何ちゅうアホな娘や! バータレ!」

と言ってコブラツイストをかけ、バックドロップをかけてやった。

そして、それらの問題をスラスラ解いてやったのである。

それを視ていた長男のエリックが、「わしの宿題も診てくでい!」とノートを差し出して来た。

見れば英語(日本でいうところの国語)の宿題であった。

これも何とか解いてやった。

二人は大喜びし、一部始終を見ていたママさんも私を天才だと褒める始末であった。

私は中二にもなって、分数の計算問題に頭を抱える彼等アメリカ人の教育水準の一端に触れ、「アメリカ恐るるに足りず!」の感慨を抱いたのである。

実際、アメリカでは中学生に限らず高校生や、大学生でさえも、方程式の計算どころか分数の計算問題すらできない奴が少なくない。

何故ならば、周知のようにアメリカの大学では入りやすく出にくいといった事情に加え、入学選考に際しては学業成績の他に課外活動(クラブ活動や、特に地域のボランティア活動など)の有無も重視されるからである。

また、一般にオールマイティーな人間よりも、一芸に秀でた人間を育てようとする風潮も社会にあるからだ。

しかし考えてみれば、アメリカのように大学生になっても分数の計算問題ができないのも格好悪いが、日本のように大学生になっても社会人としての躾がなってないのも情けない・・・・・。


To be continued!




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