サンフランシスコ紀行

サンフランシスコ湾から市街を臨む
photographs courtesy Ross Taylor



No.16 "NO SMOKING!"

☆アメリカの生活で一番困ったのは、実はタバコであった。

アメリカでは、パブリック・スペース即ち公共の場所では、一切喫煙できないと思って間違いない。

特に私がいたサンフランシスコの電車の駅構内などには、必ず警察官がうろうろしていて、タバコを吸ったら注意されてしまうことは必定である。

飛行機の中はもちろんだが、町のレストランでも喫煙者用のエリアと非喫煙者用のエリアが厳格に区別されている。

一般的にアメリカでは、喫煙は喫煙者の健康を損ない、周りにいる非喫煙者の健康をも害するという教育が行き渡っており、喫煙者は「少し頭がおかしい!」「かわいそう!」「アホか!」「変態よ!」という眼で見られ、非常に肩身の狭い思いをしなければならないのだ。

さて、私がホームステイした一家は非喫煙者のファミリーであった。

しかし、私は日に40本から60本のタバコを吸う人間である。

非常に困った!

昼間、学校にいる間は問題ないが、自宅にいる間、特に家族と過ごす週末ともなると、私は禁煙を強いられるのだ。

そうして、どうしてもタバコが吸いたいときは、夜中の丑三つ時にむっくり起き出して戸外で吸うか、あるいは「俺は高校生か!?」とぼやきながらトイレの中で吸うしかないのである。

そう言えば、昔ドイツのヒトラーは、「外交交渉において喫煙者と交渉するときは、奴等にタバコを吸わせないことだ! 彼等はタバコ吹いたさに、一時間も我慢できずに”YES!"と言う」との言葉を残している。

喫煙者にとって、タバコを禁じられるということは、本当に苦しいことなのである。

それはさておき、ある日の帰宅途中、私はバス停から自宅に着くまでの間、しばし歩きタバコをしていたのであるが、運悪く私を迎えに来たニコルとバッタリ出くわしてしまった。

私は、すぐさま手にしていたタバコを捨て去り、彼女の前で土下座をして、

「どうか、このことはステファニーママさんには内緒にしてくでーっ!」と頼み込んだ。

彼女は笑いながら、「日本の歌を教えてくれたら・・・・」と言ったので、私は仕方なく、

「それでは、今、日本で一番はやっている歌を君にだけ今回特別の配慮でこっそり教えてあげよう!」

・・・と、「軍艦マーチ」を教えてあげた。

(守るも攻めるもくろがねのー、浮かべる城ぞ頼みなるー・・・・)

アメリカの片田舎の寂しげな夕暮れ時、何故か違和感もなく、二人の唄う”軍艦マーチ”が、夕焼け空に楽しげに消えていった・・・・。


To be continued!




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