サンフランシスコ紀行

Kids!
向かって左から、シェリー、筆者、マイク、エリック、ニコル



Vol.13 "Do you like an apple?"

☆いよいよ待ちに待ったホストファミリーと対面する日がやってきてしまった。

その日、私は現地のコーディネーターのオッサンに連れられ、ホストファミリーとの待ち合わせの場所となっていたコンコード市内のある幼稚園へ赴いた。

私は、そこから先ずモラッシュさん宅へ連行され、夕食をご馳走になった。

まるで借りてきた猫の如くに、おとなしくしていた私であった。

モラッシュ婦人はもちろん日本語は話せない。 私も当時は英語をうまく話すことなどできなかった。

ところが、何かのはずみで私がクスっと笑うと、彼女もそれにつられて笑い出し、やがて互いに腹を抱えて大笑いを始めたのである。

それは、それは、他人から見ればおかしな光景であったろう。

初対面どうしで、まだ意志の疎通もなく、いや、それよりも一言もしゃべっていないのに、ただゲラゲラと小一時間もの間笑い続けているのである。

笑いは万国共通とはいうが、私もすっかり打ち解け「アメリカ人、恐るるに足らず!」と悟ったのであった。

そうこうしている内に、私のホストファミリーであるステファニーママさんと長女のニコルが、車で私を迎えに来てくれた。

ステファニーママさんは、いかにもアメリカ人という感じの金髪美人ママさんで、娘のニコルは、黒髪の優しそうな瞳をした丸顔の美人であった。

「やったーい! ラッキー! しめしめ・・・!」と、表情には出さねども、私は心の中でVサインをしたのであった。

ママさんの運転する車は、約30分で隣町マーティンズのミリーアンレーンにある自宅に到着した。

私は、先ず家族を紹介された。

パパさんで弁護士をしているジョー、長男の高校生エリック、次男の小学生マイク、そして次女の中学生シェリーである。

シェリーは、ママさん似の金髪カリフォルニアギャルで、チアリーダー(チアガール)をしており、私の一番のお気に入りとなった。

やはり私も日本人男性のひとりであり、また、特に大阪人でもあった。

すなわち、パツキン(金髪)にはヒジョーに弱いという特性をもっていた・・・・!。

野郎どもとは握手をしての挨拶であったが、彼女たちとは嬉しいことに、夢にまで見た(外国の映画やドラマでもよく観た)、抱き合って頬にキスをしあっての挨拶であった。

これだけでも、ここアメリカくんだりまで、はるばるやって来た甲斐があったというものだ。

ただし、アメリカとはいえ、女の子と抱き合ってキスをしての挨拶の時、無意識のうちに手がヒップに伸びないように注意せねばなるまい。

ここは日本のいかがわしい風俗店ではないのだから・・・・。

やがてソファーでくつろぐ私に、物珍しく思うのか、子供達が品物を持って交互にやって来ては私に告げた。

「Do you like an apple?(リンゴは好き?)」「バナナは好き?」「メロンは好き?」「チョコレートは好き?」「コカ・コーラ好き?」「漫画の本好き?」「テレビ好き?」

そして最後にはネタがつきたのか、飼っている犬や猫を連れてきて、

「犬は好き?」「猫は好き?」と私に尋ねるのである。

私は心の中で、「こらこら、わしは幼稚園児やないぞ! Do you like?だけやなくて、もっと高度な英語の質問をせんかい!!」と思いながらも、彼等の心遣いが嬉しかった。

おそらく、彼等はそうすることで、私が少しでも早くこの家庭になごみ、心を開くと考えたのであろう。

でも、ひょっとしたら、案外からかわれていたのかも知れない・・・・!

いづれにせよ、我が生涯における最も幸福な日々は、こうして幕を上げたのである。


To be continued!




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