サンフランシスコ紀行

UCB正門
photographs courtesy Philip Greenspun



Vol.11 俺にちかよるな、シッ、シッ!

☆サンフランシスコに着いた二日目、私は次の週から聴講生として勉強することになっていたカリフォルニア州立大学バークレー校(UCB)の見学にでかけた。

アルバート・ハモンドによって歌にも唄われたカリフォルニアの青い空と(ちょっと古いな!)、2月の柔らかな日差しと、心地よく頬をなでる風、それらすべてが私を祝福してくれているような、何となくいいことがありそうな幸せを感じる日々であった。

しかし、その日、世にも恐ろしい、気持ちの悪い、とんでもない悲劇が私を待っていようとは想像だにもしなかったのである。

サンフランシスコ市内からUCBへは、BART(バート/湾岸鉄道)のパウエル駅でコンコード・デイリーシティー線の電車に乗り、ロックリッジ駅下車、バスで10分くらいで着く。

さすがに東のハーバード、西のバークレーとうたわれた名門大学である。

敷地はかなり広く、いかにも歴史ある風情を呈していた。

私は大学の事務局に寄り必要なオリエンテーションを受け、次に生協を訪れた後、昼時にもなっていたのでどこかで昼食を摂ろうと思った。

辺りを見渡して歩き回っていると、小さな中華料理屋を発見した。

とりあえず私はそこに入ることにした。

店の中に入ると奥から、無精ひげを生やした韓国系アメリカ人のオッサンが薄気味悪い愛想笑いをしながら出てきた。

私はメニューにあった野菜丼なるものを注文した。

おそらく中華丼のようなものが出てくるのであろうと思っていたのであるが、出てきた料理は、皿の上にゴワゴワしたご飯が盛られ、その上にフライパンで適当に炒められた野菜がぶっかけられているだけの、小学生でも、いや幼稚園児でも作れそうなものだったのである。

「おいおい、オッサン! 何ちゅうもん出すんや! 野菜丼て、そのまんまやないか! しかも、これは皿やんけ、丼とちゃうぞ! こんなもんで商売したらあきまへんがな!!」

私は心の中でこう叫んだが、食べてみると結構おいしかった。

やがて、どこから現れたのか、初老の薄汚いオッサンが店にやって来て、私の横の席にピタっと座ってきた。

そして、オッサンは私に向かってニコっと笑ったり、しきりに色目を送ってきたのである。

私は不気味に思ったが、こんな奴に関わり合いになってはいけないと思い、平然を装い無視していた。

そうしているうちに、そのオッサンの友人らしき、これまた不潔そうな気味の悪いオッサンが店にやってきて、初老のオッサンの隣に、これまたビタっとくっついて座ったのである。

いったい何が始まるんだろうと息を殺して観察していると、やにわに彼等はギュっと抱き合って、そして熱いキスを交わしだしたのである。

私は、思わず口の中に含んでいた物を吐き出しそうになるのを必死になってこらえた。

オッサン達は相変わらずディープキスをしている。

私は、「お前ら何者やねん! パタリロを観ても分かるように、普通ゲイというものは、美少年どうしがするもんや!」と、心の中で叫んだ!

やがて彼等はキスをやめ、そして私の肩に手をかけ、優しそうな笑みをを浮かべてこう言った。

「ぼうや、わしらと一緒にホテルへ行かないか!? かわいがってあげるよ!」

私は思わず「優しくしてね!」と、一発ギャグを飛ばそうとしたが、本気にされては困るので、急いで石もて追われるがごとくに、その店を飛び出して逃走したのであった。

「ああ、怖かった・・・・!」

その時の正直な感想である。

教訓「ゲイは美少年とは限らない!」


To be continued!




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