サンフランシスコ紀行

サンフランシスコから金門橋を臨む
photographs courtesy Ross Taylor



Vol.8 ・・・・・負けた・・・・・。

☆アメリカに来てしばらくした後、気づいたことがひとつある。

そして、それはその後の私の人生においても痛烈なアメリカに対する印象として、今日もなお私の心の中に残っているものだ。

当初の私のアメリカに対する印象、いや先入観は次のようなものであった。

すなわち、アメリカ人は野蛮な南蛮人で、無礼で、遠慮というものがなく、やかましく、厚かましく、肉ばかり食べており、頭の中はいつもラッパが鳴り響いているような人種であろう、というものである。

だが実際は、ごく普通のアメリカ人はそうではなかった。

普通の多くのアメリカ人はGentlemanであり、礼儀正しく親切で、エチケットやマナーをわきまえた人々であったのである。

彼らは、電車の中やスーパーマーケットの中など、人がたくさん集まっている所で少しでも肩が触れようものなら必ず「Excuse me!」と言って謝る。

大阪は梅田の東通商店街で、肩が少し触れたり、やれ面を切ったとすぐケンカになるのとは大違いである。

またアメリカ人は、バスに乗るときなどは運転手と「Good morning!」等の挨拶を交わし、降りるときは「Thank you!」と言い合う。

大阪でバスの運転手に「おはよう!」と声をかけようものなら、「お前、なめとんのか! 気安う声かけんな!!」と叱られてしまうだろう。

エレベーターの中や街角で見知らぬ人と出会っても必ず「Hi!」と挨拶を交わす。 大阪でこんなことをしたら恐らく殴られるか、「あのオッサン、ちょっとおかしいで!」と後ろ指をさされることだろう。

私は、礼儀正しいそんなアメリカ人を観て非常にショックを受けた。

しかし、それがごく普通のアメリカ人の日常の姿なのだ。

いつしか私も彼等アメリカ人と同じように、エレベーターの中で見知らぬ人に会ってもニッコリ笑って気軽に挨拶できるようになっていた。

日本人は礼儀正しい民族であると言われてきたが、それはもはや過去の話であろう。

礼儀正しさ、親切さ、エチケットやマナーという点では、到底我々日本人はアメリカ人にはかなわないであろうと思われる。

「・・・・負けた・・・・戦争だけでなく、道徳でも日本はアメリカに負けた・・・・。」

私は、しみじみと、ある種の寂寥感を味わい、皇居前広場にて土下座をしたい心境にかられたのであった・・・・。


To be continued!




前のページへ戻るトップページ次のページへ




All Rights Rserved,Copy Right(C)Y.Bijohira/OfficeLEIBSTANDARTE,1998

Nr.19980601SFS008