☆ダウンタウンに戻った私は、しばらくはその界隈を視察することにした。すると突然、前からやってきた恰幅の良さそうな黒人のオッサンが、私を呼び止め、そして道を訊ねるのである。
私は驚いた!
「何で私に道を訊ねるのだ!? 見れば分かるだろう! 私は日本人なんだ、ここアメリカでは、私は栄えある外人なんだ・・・・!!」
私は適当にそのオッサンをあしらい、気を取り直して歩を進めた。
すると今度は、前方右ななめ45度の方向から3人連れの白人のオバサン連中が道を占領しながらやってきた。
洋の東西を問わず、オバサンという人種は道いっぱいに広がって、大声でしゃべりながら練り歩くものらしい。
私は関わり合いにはなるまいぞと、そそくさ通り過ぎて行こうと思ったその時である。
厚かましくも、めざとく私に気づいたオバサンの中の一人が、またしても私に道を訊ねるのである。
私は、「ええかげんにしなさい! 何で俺に道を聞くんや! 見たら分かるやろ、わしは大阪人や!」と心の中で思わず叫んでしまった。
その時である。
私はふと辺りを見回した。
ダウンタウンだけあって、多くの人々が行き来している。
彼らの顔と肌の色を見て、私はハタと悟った。
アメリカは人種のるつぼである。
白人もいれば黒人もおり、そして黄色人種もいる。 すなわち「これがアメリカ人だ!」という人種は存在しないのである。
「そうか、それで私に道を訊ねてきたのか・・・!」と私は納得した。
以降、私は道を訊ねてくるアメリカ人に対しては、「わし大阪から来ましてん、なんもわかりませんわ!」と丁寧に教えてやることにした。
・・・・と思っていると、前方から日本人丸だしの、すなわち首からカメラをさげ、よれよれのスーツに眼鏡をかけたオッサン一人が、もみ手をしながら私に話しかけてきた。
「ア、アノーXXホテルヘユクニハ、ドウイケバイイノデスカー?」
そのオッサンは、自分では英語を話しているつもりらしく、日本語を英語のイントネーションで必死になってしゃべっていた。
どうやらツアーの人達とはぐれたらしい。
そして私のことを日系アメリカ人とでも思っているのであろう。
「オッサン、わしは日本人や!」
「アノウ、スミマセンガ・・・・」
「日本語を英語風に発音しても無駄やて!」
「オウ、ワタシハ・・・」
「日本人やて!」
「プ、プリーズ・・・」
「日本人やいうてるやろっ!!」
「え、えーっ! 日本の方ですか!? す、すんませんでした!」
やれやれ、私は親切にも、こわーい、アブナイ、たとえ死んでも旅行者は近寄ってはならぬと言われているハーレム(ギャング街)の方向を、そのオッサンに教えてあげた。
いたずらのつもりであった。
若気の至りであろう!
オッサンは礼を言って、そのハーレムの方向に消えていった。
その後オッサンがどうなったのかは、誰も知らないと言われている・・・。
そして次の日、私もハーレムを体験することになる。
To be continued!